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イントロダクション

嗚呼、理想よ。幻想よ。
極彩色の「ギロチン社」が、いま甦る

関東大震災の前年、貧しく哀しいアナキストが人知れず集結した。「所詮、この世を馘になった身」とうそぶく男たち。彼らこそ、大正の日本を震撼させるべく立ち上がった無政府主義結社「ギロチン社」である。

「ギロチン社」は、この世を全否定しつくす修羅の道を行く。破壊された大地でしか頭をもたげぬ、創造の芽のため。理想に生き、理想に死ぬため……。

金と酒、そして白粉の匂いに溺れた「ギロチン社」の理想と幻想が、今、大正の空気もそのままにスクリーンに立ち上る。身を切る叫びに包まれた青春活劇をとくとご覧あれ!  

杯を空けろ、最期の一杯だ!この身の恥辱を拭い、朝まで叫び踊れ!

【2013年/138分/カラー/16:9/HD/3.0 Chステレオ】
製作:シュトルム・ウント・ドランクッ製作委員会
配給:ワイズ出版
監督:山田勇男

実力派・個性派の俳優、多彩なミュージシャンが出演した豪華キャスト

主演の松浦エミル役は劇団「少年王者舘」の舞台を中心に活動する中村榮美子。強い意志を持った眼差しと演技力に定評がある。ギロチン社リーダー・中浜哲役には、劇団「tsumazuki no ishi」主宰で作・演出・出演を務める実力派の寺十吾。ギロチン社のメンバーには、廣川毅(新人)を始め、若手実力派俳優の吉岡睦雄、上原剛史、礒部泰宏、松浦祐也や小林夢二(少年王者舘)、海上学彦らを配した。また、山田の前作『蒸発旅日記』から銀座吟八、藤野羽衣子が引き続いての出演となる。

このほか、キーパーソンとなる有島武郎役に佐野史郎、福田雅太郎役に流山児祥、甘粕大尉役にはミュージシャンのあがた森魚というベテランを配役。大杉栄役には数々の映画で個性的な演技が光る川瀬陽太を起用。

また、映画監督だけでなく多彩な活動をする山田勇男監督とあって、つげ忠男、うらたじゅん、伝説のパフォーマー・黒田オサムをはじめ、漫画家やミュージシャンを多数配役。現代に再現された大正時代の伝説的カフェー「南天堂」でライブを繰り広げるのは、ジンタらムータwith 黒色すみれと白崎映美だ。また、原マスミやシバ、割礼の宍戸幸司、元たまの知久寿焼、坂本弘道などもゲスト出演で花を添える。

センチメントの映像作家・山田勇男が、詩情豊かに描く「ギロチン社」

演劇実験室「天井桟敷」でキャリアをスタートした山田勇男。劇場デビュー作『アンモナイトのささやきを聞いた』が、カンヌ国際映画祭批評家週間に招待される一方、8ミリフィルムを中心に100本を超える作品を発表し続けている。2004年にはドイツ・オーバーハウゼン国際短編映画祭で特集プログラムが組まれるなど、海外での評価も高い。

センチメントを切り取る映像作家・山田勇男が、若き大正無政府主義者たちのエピソードを本歌取りし、独自の世界を表現。死を呑み下した男女の「たまさかの美」を、匂い立つ映像美で物語る。

天野天街主宰「少年王者舘」がキャスト、スタッフ両面で参加

10年ぶりとなる山田映画のため、盟友・天野天街率いる「少年王者舘」が参加。前記2名のほか、天野本人の出演はもちろん、山本亜手子、夕沈、池田遼、井村昂らメンバーが出演。また天野の傑作短編映画『トワイライツ』主演の石丸だいこもパフォーマンスを披露。スタッフには、低予算ながら大正時代を見事に表現した衣装の雪港、音楽を彩るのは珠水。美術は王者舘の舞台美術も務めた伊藤熹朔賞受賞の水谷雄司がその力を十二分に発揮している。

極彩色の大正絵巻が、スクリーンに立ちのぼる

大正時代の特徴ともいえるレトロ感を再現するために、ロケ地から小物の一つに至るまで、徹底的にこだわり抜いた本撮影。時代感を出すことは至難と言われる低予算のインディーズ映画ながら、山田勇男の目は、大正の空気を残す現場を見つけ出した。

特にギロチン社の部屋は、国登録文化財・建造物「本田家住宅主屋」で撮影。都内最古、築300年近くのあまりに貴重な建造物を、ロケーションにこだわり続けたスタッフがクランクイン2週間前に「発見」、本作のために奇跡的にお貸しいただいた。建物から内装まで、まさに時代を経た「本物」であり、本作の映像美を決定づけた快挙である。

道具類はコレクター秘蔵の逸品を借り受け、衣装や小物も本作のために一品ごと作り上げるなど、オールスタッフがこだわり抜いたもの。また、当時の若者が街中から抜け出してきたような、生き生きとした装いも見逃せない。

あらすじ

大正十一年、冬。放浪の旅を終えた中浜哲(寺十吾)は、旧友、古田大次郎(廣川穀)と「ギロチン社」を結成。大企業への恐喝で資金を得ながらテロルを企てていた。 

しかし、酒と色に溺れながら革命を目指す彼らを関東大震災が襲い、さらに大杉栄(川瀬陽太)が、戒厳令に乗じて虐殺される。復讐を誓う「ギロチン社」だが……。

最後に嗤うのはピストルと爆弾か、それとも国家か。そしてすべてを見はるかす謎の女性・松浦エミル(中村榮美子)は何を想って涙するのか。

時を越え、カフェー南天堂では盛大に音楽が鳴り響く…… !

[シュトルム・ウント・ドランクッ]とは……
 「疾風怒濤と訳す。18世紀後半、ドイツに起こった若いゲーテを中心とする革新的文学運動。理性中心の啓蒙主義に反対し、自然・感情・天才を重んじた。クリンガーの劇の題名に由来する」(広辞苑より)